大視協 一般社団法人 大阪市視覚障害者福祉協会

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大視協ジャーナル12月号 第534号

談話室

視覚障害者と終の棲家 
             一般社団法人 大阪市視覚障害者福祉協会
                         会長 川越 利信

 私たちのような小さな組織ですら、この1年の間に逝去されて引き取り手がない方がお二人もおられました。終の棲家について改めて考えさせられました。
 9月6日、西成区天下茶屋駅前開発に関するパブリックコメントに意見書を提出しました。概要は、次のとおりです。

 厚生労働省によると、身体障害者手帳を所持する視覚障害者数は27万3千人です。(2022年12月、「生活のしづらさなどに関する調査」)。 大阪における身体障害者手帳を所持する視覚障害者は、2万4千198人で、そのうち大阪市は 1万169人です(2022年12月、大阪市統計)。 最も所持者数が多いのが東京(3万7千337人)で、2番目が大阪市です(2018年、「社会福祉施設等調査」)。
 終の棲家を基軸として視覚障害者のQOLの向上と自立を支援している特定非営利活動法人 全国盲老人福祉施設 連絡協議会(全盲老連)によると、60歳以上の視覚障害者は7割以上を占めています。 私たちが属する大阪市視覚障害者福祉協会においても、全盲老連の「60歳以上7割」を実感します。 これら視覚障害者は、終の棲家問題に関して、当然、強い関心を持っています。仕方なく特別養護老人ホームに入居している人たちも、終の棲家をいま思い悩んでいる人たちも一様に「盲老人ホーム」への入居を希望しています。 なぜなら、いわゆる「特養」と「盲老人ホーム」とでは日常的に受けるサービスが質的に異なるからです。異なる原因は、教育・研修等で視覚障害者の特性を把握した人たち(従業員)によるサービスと高齢者一般を対象とした研修を受けてきた従業員によるサービスの違いです。
 大阪市における視覚障害者の終の棲家に関する施策は明らかに不十分です。視覚障害者数(身体障害者手帳所持者)は東京に次いで2番目ですが、「盲老人ホーム」の設置状況は、東京の4施設に対して大阪は北部に1施設のみです。人口279万人を有する政令指定都市大阪市には1施設もないのが現状です。可及的速やかに大阪市内に「盲老人ホーム」の設置が求められている所以です。

 以上の状況を踏まえて天下茶屋駅前開発において、視覚障害者が長年強く望む終の棲家を中心とする必要かつ有効な関連施設を設置するために開発計画敷地の一部を利用できるよう、意見書を提出しました。施設の建築を要望するのではありません。私たちも私たちなりの努力をする覚悟で施設建築用の敷地を借用したいのです。
 確かに大阪市における視覚障害者の終の棲家問題は見るべきものがありません。高齢視覚障害者は困っています。しかし、それは本会の責任でもあると思います。この問題を解決するための説明や要望を大阪市にしっかりとやってきたのか、反省が求められます。会員の要望は強く、定時総会のたびに理事会は会員から叱責されました。法人としては、ようやく3年前から大阪市に相談を始めました。しかし、施設建築用敷地の確保は難しく、時だけがいたずらに流れていきます。早く、何とかしなければ不自由な生活と寂しい晩年を過ごさなければならない高齢の視覚障害者が後を絶ちません。本会の本気度を示す意味も含めて、今回パブリックコメントに応募した次第です。
 視覚障害者の終の棲家問題はとても大事な課題です。諸々の困難な問題があることは重々承知のうえで、優先課題のひとつとして取り組んでいきます。