大視協ジャーナル9月号 第519号
談話室
障害を持つ女性と社会活動
レポーター 山口文代
8月3日(木)、大視協会員の金城豊秀(きんじょう とよひで)さんのご紹介で大正区にある骨董品アートの店で、ギョーム・イヴァンカさんのインタビューに同行させてもらいました。イヴァンカさんは車椅子利用者で、フランス国立東洋言語文化大学で日本学科を専攻し、今は社会学の博士課程の学生さん。東京大学特別研究員でもある。実に穏やかな口調で話されます。
インタビューは、日本における女性障害者の社会活動に関して視覚障害の山本美惠子(やまもと みえこ)さんと聴覚障害の守本和美(もりもと かずみ)さんを対象に行われました。内容を簡単に、主に視覚障害の山本美惠子さんに焦点を当ててレポートします。
山本美惠子さんは西淀川区の会員です。ご自分のこれまでを謙虚に静かに語られました。
4歳の時に腎臓病が原因で弱視に。小学1年の1学期まで普通校に通い、小学3年から大阪府立視覚支援学校へ入学。寄宿生活を送りながら中学、高校へと進学。
卒業後は、結婚するまでは自宅で三療の仕事。夫の山本祐憲(やまもと すけのり)さん[大視協会員・理事]とは在学中に知り合う。
大視協への入会は、29歳の時。入会の動機は、点字競技会に出場するため。点字競技会は、たとえば点字を正確に読む速さなどを競うもので、川越会長が審査員をされていた大会で優勝したことも。
入会後は2人の子育てをしながら、編み物やミシンの教室に参加して、技術を身に付ける。
出産や子育てでは、障害を持っているがゆえの苦労を経験。赤ちゃんが熱を出した時などは、とても不安で右往左往し、近所の人たちの支援を得て事なきを得る。
そして、2006年から理事に就任。女性部を担当し、女性の学びである料理や裁縫、編み物、お花、お茶などの教室を運営。
2012年には女性部長として、大視協会長の指揮のもと「第58回全国盲女性研修大会」を開催。
女性部の他には青年部や高齢の部もあり、当時は見えない人は外に出る機会は少なく、バスツアーが企画されると定員をオーバーする申し込みがあった。
在学中の寄宿生活では、外出やおしゃれが出来ず辛かったが、ヘルパーさんが外出などを支援してくださるようになってからは悩みも軽くなったとのこと。
障害を持つ子どもを育てておられる親御さんに私からアドバイスをするとすれ
ば、お子さんを障害者としてではなく、なるべく普通の子どもとして育てて欲しい、
お子さんの好奇心が芽生え、発達すると思うので。また同時に、障害者を支援する社会の制度については、無くさずに発展させていって欲しいとも。
聴覚障害者の守本和美さんもろう学校時代は寄宿生活だった。学生時代の苦労と先生への感謝、結婚・出産と離婚、聴覚障害の女性たちとの交流や、手話を広める活動などについての思いを語られた。
山本さんと共通しているのは、出産と子育てでは障害者ゆえに苦労されたことです。
日本においては、出産・子育てが、障害者の場合は特に問題であることが浮き彫りになった。 最後に、日本とフランスにおける障害者が暮らす環境の違いについて意見を交換。日本はフランスよりもバリアフリー等のハード面が進んでいる。一方、フランスは教育・医療の無料や、高齢者・障害者への気遣いや子育て支援の充実などソフト面が進んでいる印象がある。概ねこういう意見が出された。
インタビューの後、笑顔で記念撮影をする山本さんとイヴァンカさん