大視協ジャーナル 5月号 第515号
談話室
生活を豊かにするスマホのすすめ
東成区 榊原尚子
総務省調査によると、国民の約95%が携帯電話を保有しており、約7割はスマホ保有者。60代で7割、70歳以上でも半数近い人がスマホを利用しています。視覚障害者は、2017年の調査によると、全盲の約52%、ロービジョンの約56%がスマホを保有しているという結果でした。
視覚障害者の半数は、なぜスマホを持たないのでしょうか。周りの視覚障害者に理由を聞いてみると、単純に操作が難しそうという意見が多いです。ボタンのない平らな板に触れて操作するなんて、どうすればいいのか確かに想像がつきませんよね。
視覚障害者の多くは、アイフォンというスマホを使っています。アイフォンには標準でボイスオーバーというアクセシビリティー機能が付いていて、設定すれば音声読み上げができます。指での画面操作も5本の指をフルに使い、こんなときは1本指でタッチ、この操作は2本指で2回タッチなど、操作にルールが設定されているので、一度覚えてしまえばすぐに使いこなせるようになると思います。拡大文字、画面の白黒反転、大きなカーソル表示なども設定できます。
スマホを持たない理由のもう一つは、目が見えないからカメラは使わない、1人で出かけないから地図のナビゲーションは要らない、音楽も読書もデイジープレーヤーがあるから間に合っていると、スマホのよいところを否定する意見です。そんな方々には、こういった使用方法はいかがでしょうか。風景の写真は撮らなくても、例えば書類を撮影しておけば、アイフォンの機能で内容を読み上げることができたり、レトルトや冷凍食品の調理法をカメラをかざして読み上げたりできます。以前は有料のアプリが必要でしたが、現在は無料のアプリでも文字の検出が可能で、高い精度で読み上げできます。
ビーマイアイズというアプリは、視覚障害者が、ちょっと見て助けてほしいときに、24時間いつでもアプリでボランティアさんにつないでもらって、アイフォンのカメラを使って、見えたものを教えてもらうことができます。例えば自動販売機でお茶を買いたいとき、どこだろうと思ったら、「左から何番目がお茶だよ」と教えてもらうことができるのです。誰も助けがないときには、とても助かるアプリです。
先ほどから出てきている「アプリ」ですが、何だろうと思っている方、難しく考えなくても大丈夫。テレビのリモコンでチャンネルを選ぶようにアプリを選んで、そこで見られる番組のように、そこでできることが決まっているという仕組みです。画面にリモコンのボタンのように、アプリの名前が並んでいます。初めからあるアプリもありますが、後から買い足すことができます。スマホも電話ですから、電話の便利機能を一つ。インターネット検索アプリで、例えば大視協の電話番号を調べるとすると、画面に出てきた電話番号から、直接電話をかけられます。番号を覚えたり、メモしたりしなくても、そのまま電話できるんですよ、便利ですね。
最初は戸惑うこともあるかもしれませんが、アイフォンなら多くの人が使っているので、基本的な指の操作方法さえ覚えておけば、分からなくなったときに誰かに助けてもらいやすいと思います。
デジタル化が加速する社会で、手続きなどデジタルが優先される場面が増えてくると思われます。そんなとき、自分のスマホがあれば、何もかも自分でできなくても、誰かに手続きを手伝ってもらうことはできます。まだスマホを持っていない方も、勇気を出してスマホに挑戦してみてはいかがでしょうか。